広島市の国民健康保険 機械的な保険証の取り上げやめ 住民との信頼が生まれる

（２００９年６月３日）

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保険料が払えない滞納者から、機械的に保険証を取り上げた結果、医者にかかれなくなった患者が命を落とす事例が少なくありません。広島市では、これを抜本的に改善し、住民との信頼関係が生まれています。

国は、２０００年４月から、１年以上保険料を滞納している世帯から保険証を取り上げることを義務付けましたが、保険証がなければ医者にかかりづらくなり、病気が重くなって、ひどい時には命を落とすことも少なくありません。 　広島市でもこれまで、保険証の取り上げが８０００世帯に上り、手遅れになって死亡する事態がありました。市ではこれを反省し、昨年５月に保険証の「取り上げ基準（※）」を改訂。保険料を払っていなくても、面接して状況を掌握し、悪質だと判断したもの以外は取り上げないことにしました。

（※）この「基準」は、広島市の「国民健康保険料の滞納者に係る被保険者証及び資格証明書の更新等事務実施要領」で定めているもので、改訂によって「保険証の返還の対象としないものとする」（第１１条３項）に、新たに「（３）納付相談・指導の機会が確保できない等で特別の事情の有無や生活状況等が把握できない世帯主」という項目を加えた

その結果、１年以上の滞納者９６６０世帯のうち、３３３８世帯と面接できましたが、悪質だと判断して保険証を取り上げたのはわずか１件しかありませんでした。しかも、面接できた世帯のうち、保険料を支払った世帯が２７２２世帯に上っています。

〔訪問面接の状況（２００８年１０月末現在）〕

世帯数 １年以上の滞納者 9,660 上記のうち面接できた世帯 3,338 そのうち保険料を支払った世帯 2,722 悪質滞納者の判断した世帯 1

国は、「保険料を払ってもらうために保険証の取り上げが必要」としてきましたが、広島市では逆に、保険証を取り上げないことが納入を促進させています。市の担当者は「保険証の取り上げは、市に対する不信感を生んでいたのかもしれない。本当の悪人はいない。取り上げないことで、市を信頼してくれるようになった」と話しています。まさに、住民の命を守る自治体にふさわしい取り組みです。

〔広島市の状況（２００９年３月３１日現在）〕

全市 人口 1,167,963 世帯数 519,502 国保加入状況等 被保険者数 287,687 加入世帯数 169,537 短期保険証交付数 17,598 資格証明書交付数 1 全体滞納世帯数 61,781

「短期保険証」とは有効期限の短い保険証 　　　　　　　　　　　　「資格証明書」とは保険証取り上げ世帯に交付されるもの

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